住職日記

西明寺境内

西明寺に参拝される方に、このお寺はきれいですねと言われます。
仏教に接してもらい、法話を語るだけが布教ではありません。参拝者が西明寺に来た時だけでも世俗の営みを忘れ、身を清浄にし、心を清くして、仏の心を味わっていただきたいのです。真の浄域で心を洗ってもらうのが、何よりの説法だという信念から実践しています。
仏像や建物だけを見物する名所、観光地だけにとどまらず、そこに信仰心が芽生えたらというおもいで掃除を心がけております。霊域は霊域としての清浄さを保ってこそ訪ねる方の心を清めることができると思っています。
また、参拝される方から、この寺は自然と無理なく溶け込んでおり、凛としていながら、どこか心あたたまると言われます。
私は西明寺の二天門から見る夕日が好きです。特に秋の落日は見入ってしまいます。素晴らしい眺めで荘厳な気さえ漂わせています。
人間は、自然の美に郷愁を持っています。しかし、美しさや優しさだけが自然の姿ではありません。晴天もあれば、豪雨もあり、雪も降ります。人々の悲喜こもごもの思いを味わわせながら、自然の営みは悠々として絶えることはありません。
この自然の姿は、人間の小ささを無言で諭してくれます。人間は考える能力によって自然を克服し得たと思い込んでいないでしょうか。しかし、どうあがいてみたところで人間もまた、自然の中に生きる微小な生物にすぎません。ですから、生命あるものには必ず死の訪れがあり、形あるものはいずれ崩れるときを迎えるのは必然の理です。
夕日はいつも私に無限な自然の力を示すかのように真紅の光芒を放ちながら静かに沈んでいきます。